RE:Fのデザインはどうやって決まっているのか

RE:Fのデザインはどうやって決まっているのか

私たちの製品には、SNITT、VIKA、STAPLA、RULLEという名前がついています。
すべてスウェーデン語です。

北欧デザインが好きなので、そのリスペクトを込めているという理由もありますが、短く、音のリズムが良いところも気に入っています。

ただ、製品名をスウェーデン語にしているのには、もう一つ理由があります。

RE:Fの製品は、すべて**「基本形状 × 基本動作」**という、一つの文法をもとにデザインしているからです。

球体、円柱、角柱、円錐、角錐といった基本的な形に対して、切る、継ぐ、ねじる、曲げる、回すといった基本的な動作を一つだけ組み合わせます。

たとえばSNITTは、「球体 × 切る」。
VIKAは、多面体を「折る」という動作から来ています。

スウェーデン語の短い動詞や名詞をそのまま製品名にしているのは、このデザインの文法を、そのまま名前に落とし込みたいと考えたからです。

シンプルなデザインと、少しの遊び心

RE:Fでは、デザインの考え方として、
「シンプルなデザインと、少しの遊び心」
を掲げています。

このうち「シンプルなデザイン」が指しているのが、まさに「基本形状 × 基本動作」という文法です。

要素を次々に足していくのではなく、一つの形に、一つの動作だけを掛け合わせる。

できるだけ少ない操作で形をつくることが、RE:Fにとってのシンプルさです。

一方で、「少しの遊び心」は、その文法の中に生まれる小さなズレです。

SNITTであれば、球体をまっすぐ切るのではなく、斜めにカットしています。
STAPLAでは、球体を重ねることで、形にリズムをつくっています。

どちらも、機能のために必須の形ではありません。

でも、ほんの少しだけ崩すことで、形に可愛げや親しみやすさが生まれます。

緑色のUSB-Cケーブルも、同じ考え方です。

本体をマットホワイトに統一しているからこそ、そこに差し込まれる緑がアクセントになります。

ケーブルは本来、隠したくなる存在かもしれません。
RE:Fではそれを隠すのではなく、プロダクトの一部として扱っています。

これも、RE:Fにおける「少しの遊び心」の一つです。

形は、製造方法からも決まります

ただし、この「基本形状 × 基本動作」という文法だけで、自由に形を決めているわけではありません。

RE:Fの製品は、すべてFDM方式の3Dプリンターで製造しています。

そのため、形を考えるときには、常に製造上の制約がついて回ります。

FDM方式の3Dプリンターは、急なオーバーハングを苦手とします。

サポート材を使えば印刷すること自体はできますが、サポートを剥がした跡が表面に残ることがあります。

RE:Fでは表面の仕上がりをできるだけ均一に保つため、基本的にサポート材を使わずに印刷できる形を前提として設計しています。

RULLEの緩やかなオフセットや、Z方向に大きく波打たせない形も、そうした制約の中から生まれたものです。

最初は、制約の中で形を考えることに窮屈さを感じることもありました。

ただ、試作を重ねるうちに、制約があるからこそ形が絞られ、それが結果としてRE:Fらしさにつながっていると感じるようになりました。

積層痕を消すのではなく、質感に変える

表面には、3Dプリンターの「fuzzy skin」という設定も使っています。

これは、印刷中にノズルを細かく振動させることで、表面に微細な凹凸をつくる設定です。

もともとは3Dプリント特有の積層痕を目立ちにくくする目的で使い始めました。

ただ、実際に照明として点灯してみると、それだけではありませんでした。

表面に細かな凹凸があることで、シェードを通る光がわずかに拡散し、和紙のような柔らかい表情になります。

単に積層痕を隠すための加工ではなく、光の質感そのものをつくる方法になっています。

現在の設定値も、一度で決まったものではありません。

印刷して、点灯して、表面の見え方を確認する。
その繰り返しの中で調整してきたものです。

接合方法

接合部の設計にも、かなり苦労しました。

RE:Fで主に使用しているPLAは、造形しやすい一方で、細く小さな部品に繰り返し力がかかる構造には向かない場合があります。

当初は、クリップやピンを使った接続も検討しました。

ただ、試作を重ねる中で、薄いジョイント部分が破損するリスクがあることが分かりました。

そこで最終的には、マグネットによる接続を採用しています。

部品コストは上がりますが、壊れやすい構造を残さないことを優先しました。

また、マグネット接続にしたことで、シェードの向きを変えられるという別の利点も生まれました。

構造上の問題を解決した結果、新しい使い方が生まれた例でもあります。

何度も作り直した、底蓋のツイストロック

特に記録として残しておきたいのが、底蓋の構造です。

底部には、電子基板とバッテリーが格納されています。

普段、お客様が開ける場所ではありません。
ただし、修理やバッテリー交換を行う際には、内部へアクセスできる必要があります。

最初は、ペットボトルのキャップのようなスクリュー式の構造にしていました。

ところが実際に試してみると、わずかな寸法のズレによってネジ山が強く噛み合い、まったく回らなくなることがありました。

しかも底面なので、指をかける隙間もほとんどありません。

そこで次に、コインを差し込んで回せるよう、底蓋に溝をつくりました。

しかし、小さなコインの幅だけで蓋を回そうとすると、かなり強い力が必要になります。

力をかけすぎると、今度は蓋そのものに負荷が集中し、破損する可能性がありました。

そこで考えたのが、現在使っているツイストロック式の構造です。

底蓋の側面に浅い突起を設け、受け側の内側にはL字型の溝をつくります。

蓋を差し込んだあと、少し回転させることで固定する、いわゆるバヨネット構造です。

さらに、開閉には専用のキーを使う設計にしました。

キーは3点で底蓋を捉えるため、一部分だけに力が集中しにくくなっています。

また、できるだけ外周側で力をかけることで、小さな力でも回しやすくしています。

普段は開けない場所だからこそ、簡単に外れる必要はありません。

一方で、修理するときに「一度取り付けたら外せない」という構造にもしたくありませんでした。

そのため、通常使用では不用意に開かず、必要なときだけ専用工具で確実に開閉できる仕組みにしています。

もちろん、この構造も一度で完成したわけではありません。

3Dプリントでは、ほんの数十分の一ミリ、数十分の数ミリの違いでも、はまり方や回転の重さが変わります。

クリアランスを少しずつ変更しながら、何度もテストプリントを繰り返しました。

数字で形をつくる

こうした形の多くは、Pythonとtrimeshを使って作っています。

数値で形を定義できるということは、あとから変更しやすいということでもあります。

オフセットの角度。
波の振幅。
シェードの高さ。
厚みやクリアランス。

それぞれをパラメータとして調整しながら、プリントして、実物を確認し、また数値を変えます。

画面の中だけで形を完成させるのではなく、実際に出力して、触って、光らせて、またデータに戻る。

その繰り返しで、RE:Fの形は決まっていきます。

数値で記録を残せることも、大きな利点です。

なぜこの角度なのか。
なぜこの寸法なのか。

感覚だけではなく、試した過程そのものを残すことができます。

形は試した結果

RE:Fの製品は、最初に完成形を思い描いて、その通りにつくっているわけではありません。

基本形状と基本動作から形を考え、3Dプリンターの制約の中で調整し、実際に印刷して、失敗したところを直していく。

見た目だけではなく、接合方法やメンテナンス方法まで含めて、一つずつ形を決めています。

だからRE:Fの形は、単なる造形のアイデアだけでできているものではありません。

手を動かし、試し、失敗し、直してきた過程そのものが、最終的な形に残っています。

私にとっては、その積み重ねこそが、この製品が実際につくられたものであることの証明だと思っています。